物件解説
四街道駅から住宅街を北へ抜けた先に、落花生畑と緑地があります。平屋建ての建築に小さな小屋がポンと乗せられたような外観の住宅が、その奥に佇んでいます。
道を挟んで、西側と南側は緑地と畑になっており、敷地の三方向が道に面していることも相まって、開放的で空気が通りぬける、気持ちの良い場所です。
この住宅を設計したのは、菊田康平と村上譲によるデザインユニットのボタンデザイン。
菊田氏と村上氏は日本大学芸術学部を卒業後、建築設計事務所での実務経験を経て、2014年から活動を始めました。住宅をはじめとして店舗や家具など、細部まで丁寧に考え抜かれたデザインが特徴のユニットです。
7年前に建てられた四街道の家は、Buttondesignにとって住宅建築の第一作です。
現在では数々のマンションリノベーションや、こだわりを感じる店舗づくりをしているButtondesign。この住宅にはその後のデザインに繋がる要素を髄所に感じられ、とても興味深く見ることができます。
施主であるご夫婦とButtondesignのふたりとは、気心の知れた古くからの友人でした。
家づくりを考え始めた時に相談したことがきっかけで設計がスタートました。
ご夫婦がまず思い浮かんだのは、ご実家での記憶。自分たちが住む家も同様に、広い敷地でのびのびとした暮らしがしたいと考えました。
設計をしているとご夫婦から、「野菜作りや植物を育てたい」「アウトドアな趣味やDIYでの外構作りを庭で楽しみたい」「家の中から見える風景を大事にしたい」という要望がありました。
Buttondesignは、ご夫婦が大切に考えている庭を生活の中でより身近に感じられるよう、どの部屋からも庭が見え、気軽に庭に出られるよう、庭を東西に2つに分けた建物の配置を提案したそうです。
道路から離れた北西側の庭 はバーベキューや子どもの遊び場などになる「遊びの庭」、道路に面した南東側の庭は日当たりがよく野菜作りなどができる「作業の庭」が設けられ、 土間、リビング、寝室は別々のエリアに分かれながらも2つの庭でつながる構成になっています。
そしてなんと言っても、この気積が大きなLDKが一体となったワンルーム空間。
玄関を通り過ぎ、小さく絞られた廊下を通り過ぎると、天井の高い空間が現れます。開放的でありながら窓は庭に対して程よく適切に配置され、居心地の良い空間になっています。
窓際には、デイベッドの様に過ごせるソファ。植栽や網戸の目隠しにラタンの建具が設置され、外からの視線を気にせず過ごせるように工夫されています。
ダイニングには同じラタンを使った小窓のような扉があります。これは遠く離れたご家族を近くに感じられるように、ご家族の写真を飾るスペースとして使われていました。
また同じ空間でありながらも、キッチンの家具は他より濃いブラウンの木材を使うことで、うまく領域ができている様にも感じました。作り付けられたガラス棚などは、好きな食器を並べ、使い勝手と目で楽しむことの両方ができそうです。
そして屋根型が見れられる高い天井に目をやると、構造材のスチールロッドが空間にアクセントを与えます。モビールをかけて飾ったり、色々な使い方が想像できて、生活に楽しみを加えてくれると思います。キッチンの勝手口から庭のデッキにも出れて、庭仕事をしている家族にサッとお茶を出したり、デッキでの食事など楽しい生活が想像できます。
玄関には広い土間があります。趣味の自転車をメンテナンスしたり、家庭菜園の道具をしまったりできます。またリビングと裏庭どちらにもアプローチでき、玄関の役割を超え様々に使えそうです。
リビングの奥に進むとプライベートな空間につながっています。窓のない壁に囲まれた廊下には、トイレやお風呂、クローゼットや本棚などが配置されています。その中にある洗面所にはトップライトから落ちる柔らかな光が差し込み、仄暗い廊下の中にある光井戸のように感じます。
廊下を抜けると寝室があります。廊下と同じラワンベニヤの仕上げとなりプライベートな空間である事が自然と感じられます。
また大きな開口部から庭と連続する空間になっており、洗濯物はここで干すのだろうと、暮らしやすそうな印象を受けました。
ベニヤの壁なので、棚を打ち付けることも簡単で、自然を感じる書斎や趣味室にするなど寝室以外にもできそうです。
2 階と階段室は杉の荒材で仕上げられ、階段の踏み板は桧材が使われています。2階は荒材の仕上げも相まって屋根裏部屋のような空間で、1 階とは切り離されています。
平屋の建築の上に、荒材による2階がポンと乗っているようで、この建築のコンセプトを強調しているように感じました。 こちらも秘密基地の様な子供部屋や、1階とは気分を切り替えられる篭った書斎にすることもできそうですね。
建築家のこだわりと工夫が詰まった住宅で、あなただけの暮らしの楽しみを見つけてみませんか。