建築家住宅を遺す。デザインや文化、社会背景までを含めた「建築の価値」を次の時代へ手渡す。そのために、建築から遠いと思われがちな「不動産の仕組み」をフルに使う。これが私たちの基本姿勢ですが、今日は、その道を切り拓いてきた先人を紹介し、彼らからの学びを言葉にしてみたいと思います。

なぜ建築家住宅が残らないのかの課題の整理

戦後、日本では住宅が大量に必要とされ、高度経済成長と都市化への波に乗って、数多くの戸建て、団地、マンションを供給しました。そして、建築家によって産み出された名作も例外ではありません。しかしいま、人口減少と空き家増加の真っ只中で、当時とのギャップが開いています。単なる不動産市場に任せていては、「上物(うわもの)あり」と見なされるだけで、結局、その価値は知られることなく壊されてしまいます。必要なことは、相続、税制、耐震、遵法、修繕といった技術的な課題を整理し、価値を次の住まい手へ「翻訳」することです。そこに早くからコミットしてきたのが、一般社団法人住宅遺産トラストです。

「住宅遺産トラスト」という実装

住宅遺産トラストは、近代からポストモダンに至る建築家住宅を、単なる不動産ではなく「文化遺産」として、住み継ぐ形で保存・継承をすることを掲げるチームです。相談窓口を起点に、調査、評価、相続や信託等を含む継承スキーム、設計、資金計画、修復、公開、運営までを横断して伴走できる体制を備えています。建築史・建築設計・不動産・法務・税務・金融・広報の広い専門家ネットワークを活かし、個別性の高い住宅ごとに最適チームを編成。価値の言語化から実務のフォローまでを行い、見事に継承し続けてきました。その方法は学術的にも評価され、日本建築学会賞(業績)が授与されています。多くの名作が、彼らの活動を通じて、未来へ託されてきました。

方法論の核心

住宅を単なる「不動産」ではなく「文化遺産」と捉え、所有者の事業を尊重しつつ、現実的な継承の道筋を考え社会に還元する。保存と活用を両立し、次の住まい手・使い手への「暮らしの連続性」をつなぐことを目的とする。さらに公的機関・学術・メディアとの連携を行う。公式サイトでもそのように説明されています。まさに理念と方法が噛み合っています。そこに、一般的な不動産会社のような、損得が最初にあるわけではありません。そして、素晴らしいのは、それを継続したことで、実力をつけてきたということです。これまでの13年の活動によって蓄積されてきた信頼により、ますます活躍されるでしょう。

一緒に進めていくために教えを乞う

私たちは、彼らが達成してきたことを、より多くの建築家住宅にあてはめて、不動産の一般則で行えるような座組へと整えてきました。そしてもっと継承できる数を増やしたいと考えています。ただし先達から学んでいるポイントが3つあります。第一に、単なる不動産売買ではなく「継承する」という考え方です。この言葉は、彼らが用いる言葉をそのまま使わせて頂いています。第二に、時間をかけることをいとわない姿勢です。拙速な効率化に流れないことです。第三に、より多くの方を巻き込むことです。彼らのように建築への愛情と情熱を土台に、私たちもその軸をぶらさず、より一般解に近づけながら、取り組みを進めます。

借りたい・買いたい・使いたい