
憧れの鉄筋コンクリート造
今回は、皆さんが一度は憧れた鉄筋コンクリート造(以下RC造)の住宅3選をお届けします。建築家住宅手帖では、いままで幾つかのRC造の住宅を取材してきました。
RCと言えばこの人「安藤忠雄」氏設計、『伊東邸』
まずは言わずと知れた、RC造の建築でその名を馳せた巨匠建築家、安藤忠雄氏設計の『伊東邸』をご紹介します。
3世帯住居という変わった構成であるこの住宅で何より目を引くのが、円弧上の壁です。
2階上部までの高さの壁が、各世帯の住宅を横断し、敷地内の1本の桜の木へと向かっていきます。これにより各世帯の部屋から他の世帯を気にせず、この桜の木を愛でることができるのです。
また、2階親世帯のリビングの庭に向けられた大開口は圧巻。まるでここは美術館かと錯覚してしまう洗練された空間で過ごす日常を、是非体感してみたいものです。もう一つの見どころは、妹世帯の住宅のみ壁が白く塗られている点です。それによりRCのダイナミズムに柔らかな印象が加わっているようです。
ファッションデザイナーの父と、その子世代の兄と妹のために建てられた住宅。
是非記事全文をご覧ください。
建築家プロフィール
安藤 忠雄
1941年大阪生まれの建築家。元プロボクサーという異色の経歴を持ち、かつて野武士世代と呼ばれた安藤は、日本建築学会賞、アルヴァ・アアルト賞、プリツカー賞、AIAゴールドメダル賞など、国内外の数々の賞を受賞してきた、日本建築界が世界に誇る巨匠です。 表参道ヒルズの設計、東京スカイツリーのデザイン監修のほか、作品は美術館や公共施設、教会、商業施設など多岐にわたり、住宅も多数手掛けてきました。大胆かつ洗練された幾何学によって形作られた緊張感のある空間と、装飾を排した鉄筋コンクリートのマッシブな建築が特徴です。住宅建築の代表作には住吉の長屋(1976)、城戸崎邸(1986)などがあります。
女性建築家の最晩年未発表作品、『小林邸』
次に、日本における女性建築家の草分け的存在である林雅子氏設計の『小林邸』をご紹介します。林雅子が亡くなった2001年同年に竣工した本住宅は、最晩年の未発表作ですが、林雅子のいままでの名作住宅を彷彿とさせる空間を感じることができます。
2世帯住宅である小林邸のプランは1、2階共にL字型で、その端部が階段室や個室といったコア、中央はそれを繋ぐ大空間という構成になっています。
なんといってもその大空間に設けられた庭向きの大開口は。サッシと障子が端に収まり、RC造ならではの開放感が味わえます。
外観のRCの固い印象とは対照的に、室内は壁の板張りや床のカーペット敷きなどで親密な空気が作られています。そこに林雅子が多様した赤い色(通称「雅子レッド」)が所々に施され、空間を締める役割を果たしています。
横浜の緑の多い住宅街に、馴染みながらも存在感を放つ小林邸。より詳細が知ることができる記事本文はこちらです。
建築家プロフィール
林 雅子
1928年生まれ。日本女子大学家政学部生活芸術科住居科を卒業後、清家清に師事。日本における女性建築家の先駆けとして、住居を中心に数多くの作品を遺した。夫の林昌二も日建設計の建築家として著名。2001年没。
バブル期RC住宅の現代版リノベ、『広尾の家』
後にご紹介するのは、少し変り種。バブル期の1989年に建築家早川邦彦氏設計された住宅を、2018年に建築家 蔵楽友美氏によるリノベーションで生まれ変わりました。
この住宅はRCと鉄骨の混構造であり、その鉄骨により、2階屋根の印象的なヴォールト天井が作られています。
そのヴォールト天井にあわせて特注の半円弧状の窓ガラスが設置され、屋根の軽やかさがより一層引き立ち、ダイナミックな開口(窓)とヴォールト天井の開放的なリビングダイニングが広がります。時とともに光の差し込み方が変化し、空間の広がりが刻々と移ろう中で、白く塗られたその壁は、光の陰影を静かに映し出し、建物の美しい形態を堪能できる魅力を演出しています。
そんな新旧の建築家が時を超え、一つの建築を介した設計の対話を感じることができる広尾の家。記事全文はこちらから。
建築家プロフィール
早川 邦彦
1941年、東京都生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業後、イェール大学建築芸術学大学院修士課程修了。竹中工務店出身であり、1940年代前半生まれの建築家として、伊東豊雄、安藤忠雄、長谷川逸子らと共に、「野武士世代」と総称されています。日本のバブル期に、時代性を色鮮やかに表現しながら、いわゆるデザイナーズマンションの先駆けとなる、中庭のある共同住宅を数多く作り上げた。
蔵楽 友美
ファイブス一級建築士事務所 代表。建築家、 インテリアデザイナー。大阪府立北野高等学校卒業、京都工芸繊維大学工芸学部造形工学科卒業、同大学院修了。 2001年芦原太郎建築事務所、2005年アシハラヒロコデザイン事務所を経て、2011年より独立、2013年FIVES設立。 2015年より国士舘大学理工学部建築学科非常勤講師。2017年 The PLAN Award 2017 Villa部門 入賞(Villa-M、国広ジョージ氏と共同設計)
以上、今回は建築家が手掛けたコンクリート住宅3選をお届けしました。楽しんで頂けましたでしょうか。憧れのRC造、私もいつか今回ご紹介した住宅のような洗練された空間に住んでみたいものです。