理想の住まいを一からつくりあげる「建築家住宅」。その魅力は、唯一無二のデザインや細部までこだわった空間にあります。プランが自由だからこそ、資金計画もより綿密な戦略が求められます。

とくに注意したいのが、土地購入から設計、建築工事、引き渡しまでの「お金の流れ」。このプロセスでしばしば登場するのが、住宅ローンの「つなぎ融資」と「分割実行」です。

「どちらを選べばいいの?」「建築家との家づくりにはどっちが向いてるの?」
そんな疑問にお答えすべく、今回はこの2つの仕組みを建築家住宅に特化した視点で、わかりやすく解説します。

■ 建築家との家づくりで必要になる支払いタイミングとは?

建築家との家づくりでは、主に以下のようなステップで資金が必要となります。

 1:売主への「不動産購入費」の支払い(土地、マンション、中古戸建等)

 2:建築家への「設計監理料」の支払い

   (設計契約時、基本設計・実施設計完了時、竣工時などに分割)

 3:工務店への工事請負契約後の「着手金」

 4:工務店への「中間金」(上棟時など)

 5:工務店への完成・引き渡し時の「最終金」

つまり「不動産を買ったらしばらくは建築家と設計に専念し、建物が完成するのは、1~2年後」というのが一般的です。
そのため、建物完成時にまとめてではなく、何回かに分けて融資を受けることになります。

ここで活躍するのが「つなぎ融資」または「分割実行」というわけです。 

■ つなぎ融資とは?本体融資までの“資金の橋渡し”

「つなぎ融資」は、本来の住宅ローン(本体融資)が実行されるまでの間、一時的に資金を借りるための別契約のローンです。 建物完成後に本体融資が実行され、つなぎ融資が一括返済される形となります。金融機関によっては後述する「分割実行」に対応しておらず、この「つなぎ融資」のみを取り扱っている金融機関も多数あります。

◎ 特徴と注意点

  • 本体融資とは別のローン契約になる(別審査・別手数料)
  • 金利は住宅ローンより高め(年2〜4%程度)
  • 完済まで利息のみ支払う(月払い、先・後払い等支払い方法多数)
  • 融資額に上限がある場合も

■ 分割実行とは?建築の進捗に合わせて借りられる柔軟な融資

「分割実行」は、住宅ローンの融資額を段階的に小分けで実行する方式です。 建築の進行や請求スケジュールに応じて、1回目は土地代金、2回目は着工金、3回目は中間金、4回目は最終金、というように分けて借りることができます。

◎ 特徴と注意点

  • 設計・建築スケジュールが長期化しても対応しやすい
  • 支払い時期に合わせて柔軟に対応可能
  • 金利は住宅ローンと同じ(一般的に低金利)
  • すべての金融機関が分割実行に対応しているわけではない
  • 返済を始めず金利だけを払う(元金据え置き)期間は原則1年まで。その後は返済スタート。

たとえば、土地購入後に設計期間が1年ある場合でも、土地購入費だけ先に融資を実行し、その金利だけ毎月支払い、その期間の出費を抑えるというような使い方が可能です。

■ 両者を表で比較してみよう

項目

つなぎ融資 分割実行
融資実行の方法 完成前に短期ローンで実行 複数回に分けて本体融資から実行
融 資 元 同一または別の金融機関(別契約) 本融資の金融機関
審       査 本融資+つなぎ融資のダブル審査 住宅ローン本審査のみ
金       利 一般に高め(短期貸付扱い) 住宅ローン金利(低い)
建築家住宅との相性 ○(柔軟だが利息分コスト増の懸念あり)

◎(計画的に支払いスケジュールが組める)

 

■ 建築家住宅ではどちらがおすすめ?

◎ つなぎ融資が必要になる場合

  • 金融機関が分割実行を扱っていない(ネット銀行など)
  • 分割実行対応の金融機関より融資額が伸びた場合

→ 多少のコストはかかっても、資金の“つなぎ”が必要な場面では非常に有効な選択肢です。

◎ 分割実行が向いている場合

  • 金融機関が分割実行に対応している
  • 金利負担をできるだけ抑えたい

→ 長期戦になりやすい建築家住宅において、低コストかつ柔軟性が高いのが分割実行のメリットです。

■リノベーションの場合はどうする?

建築家住宅を購入し、リノベーションする場合も同様に、「つなぎ融資」や「分割実行」を活用することが可能です。たとえば、中古物件の購入時に1回目、その後リノベーション工事の着手金として2回目、工事完了・引き渡し時に3回目という流れが想定されます。

ただし、銀行によっては物件購入時と工事完了・引き渡し時の2回しか融資実行されない銀行もあるため注意が必要です。事前に資金の流れを明確にし、無理のない資金計画を立てましょう。

■ まとめ:建築家住宅こそ、資金計画はお早めに

建築家との家づくりは、資金の出入りが建売住宅を購入する場合と比べ、回数が多いです。

  • つなぎ融資は資金調達力が必要なときの強い味方
  • 分割実行はコストを抑えつつ、計画的に融資を受けたい人向け

設計段階から資金の流れを可視化し、建築家・工務店・金融機関と早めにすり合わせをしておくことが成功のカギです。

理想の家を実現するために、「ローンの仕組み」を正しく理解しておきましょう。

借りたい・買いたい・使いたい