物件解説
西武池袋線のターミナル駅、飯能駅から車で15分程いくと、高麗丘陵を拓いてつくられた、自然豊かな住宅街が姿を現します。西武鉄道グループが開発した、「飯能日高分譲地」と呼ばれる地区の一角、丘陵地の緑の借景を見ることができる山際の土地に、この住宅はたたずんでいます。
飯能駅まではバスも出ており、西武池袋線を利用すると、実は都心まで出やすい場所です。
この住宅を設計したのは、建築家の玉井清。現在も第一線で活躍する建築家です。デザイナーとスタイリストのオーナー夫妻との出会いは、2008年。お子さんたちの進学を機に取得した土地に家を設計してくれる人を探して、複数の設計事務所とお話をしていた時でした。最初の顔合わせでたくさんのアイデアを持ってきてくれたことに感銘を受け、「この人とならきっといい家ができる」と設計の依頼を決めたそう。
玉井清は1963年、愛知県生まれ。大工であった父のもと、幼少期より身近に建築と木のある環境で育ちました。豊橋技術科学大学を経て、建築家・竹山聖が主宰する「設計組織アモルフ」で研鑽を積みます。1997年に「タマイアトリエ」として独立し、住宅や別荘のほか、店舗設計や小屋の設計も手掛けています。作品には木造の住まいが多く、「時を紡ぐ建築」を掲げて、家族の時間が刻まれるような長く使える家、最初のオーナーが手放しても次の住まい手に住み継ぎが行われてゆく家を目指しています。
この家の入り口は3m幅の路地で、車種にもよりますが、複数台の駐車が可能です。枕木を敷いたアプローチを、トントンとたどって行くと、向かって左側には玉井の十八番でもある小屋が建っています。この小屋ではバイクなどを整備し、アウトドア道具などを置いていて、幅2.4m、奥行5.4mのバイクガレージと、幅2.4m、奥行1.8mの倉庫の2部屋があります。アウトドアがお好きな方や趣味のものが多い方にも、大満足な容量です。
建物の玄関を入ると、素敵な石やタイルのかけらがあしらわれた、洗い出しの土間が現れます。玄関から室内へ、ガラガラっと扉を開けた時、この斜めの動線が空間の拡がりを一層印象的に演出してくれています。一見すると不思議な三角形の玄関には、建築家の仕掛けた演出がありました。
玄関を入ると、大きな吹き抜け空間のリビングが姿を現します。2階の各個室やロフトともつながっているこの吹き抜けは、家の中心を東西に横断しており、その奥には裏の山林の緑が見えます。平面的には幅約2.5mの細長い部屋ですが、東西にあけられた大きな窓で明るい空間であることはもちろん、最大5mを超える高さ、そしてその向こうに拡がる緑が、面積以上の開放感を創り出しています。
リビングと連なったダイニングキッチンは、窓を介して東側の庭のデッキと連結されています。朝のコーヒータイムやお風呂上りの一杯を、ちょっと庭で過ごすというのもいいかもしれません。あつらえられた家具や照明、テーブルに置かれた観葉植物などからも、現在のオーナーの素敵な暮らしが垣間見えます。
キッチンは広い調理台で、ゆったりした作業スペースです。IHコンロは手入れもしやすく、広い収納でお皿や調理道具もしっかりしまえます。窓際なので明るくて開放感もあり、楽しく調理できます。
こちらはデザイナーのご主人が書斎として使用していた部屋です。コンパクトですが吊戸棚なども充実し、使い勝手の良いワークスペースです。梯子を上るとロフト状のベッドスペースがあり、さながら大人の秘密基地のようです。ベッドを別のところに置きたい方には、趣味のものを置く、秘密の小部屋のようにも使えるかもしれません。南側の部屋なので明るく、ガレージや庭にもすぐに出ることができます。
1階奥のメインベッドルームです。ベッドサイドには横長の窓が設けられており、森の木洩れ日で朝を迎えられます。白い壁と、木の梁をあらわした天井は、明るすぎず暗すぎず、落ち着いた就寝空間です。この部屋には、3.5畳の広めのクローゼットも付属しています。
1階にはそのほか、洗面所やトイレ、浴室も設置されています。タイル張りの浴室からは、山の風景を見ることもできます。今回の敷地と山の境には山道があるのですが、草刈りや山菜採りの人が稀に来るくらいで、めったに人が通ることもないため、森側からの視線が気になることはほとんどないそう。
リビングの正面にある階段を上ると、スタイリストでもある夫人の作業スペースがあります。小屋裏スペースで天井はあまり高くありませんが、吹き抜け空間に面しているので窮屈には感じません。リビングやキッチンの家族の様子も見ることができます。新しく住む方は手すりやネットを新設してスタディスペースに活用するなど、多目的に使用することができそうです。
2階西側には約5畳の和室があります。森に面しており、静かに吹く風が心地よい部屋で、以前は客間として利用していたそうです。小さなベランダがついており、すがすがしい朝を迎えられそうです。
2階にはそのほか、2つの子供部屋があります。それぞれ4.7畳の限られた広さですが、建築家の綿密な設計によって、明るく使いやすい部屋になっています。このままでも素敵なお部屋ですが、もし大きな一部屋として使いたい場合にはリフォームで2部屋を繋げてしまうのもよいかもしれません。
約15年住んでいるオーナーのお二人は、「今でも新しい発見がある」と言います。建築家のアイデアと家族の思い出がつまった素敵な建築家住宅ですが、オーナー夫妻のライフスタイルの変化があり、この家を離れることになりました。実はオーナーは次の家も、玉井さんに設計を依頼したそうです。
『日高の家』は、池袋まで1時間20分、新宿までも1時間半ほどで通うことができます。都心への出社がある方はもちろん、趣味を全力で楽しむセカンドハウスとしてもおススメです。緑豊かな環境を一身に享受する、建築家のアイデアが詰まった家を、住み継いでみませんか?