物件解説
古くは明治時代より、首都圏の別荘地、保養地として栄えた、足柄下郡箱根町。 強羅の街から少し離れた森の中を進んで、木々の隙間から差し込む柔らかな陽差しの中に、一軒のツリーハウスがたずございます。
設計したのは、NAP建築設計事務所を主宰する、建築家・中村拓志です。 中村拓志は、1974年東京都生まれ、少年を時代、鎌倉、金沢で過ごします。研究吾都市建築設計事務所を経て、2002年にNAP建築設計事務所を開設します。2011年には「House C 地層の家」で、若手建築家登竜門と名高い吉岡賞を受賞したのを皮切りに、各賞を受賞。2021年は「上勝ゼロ・ウェイストセンター」で日本建築学会賞を受賞しております。
人の個人宅から、パブリック建築をはじめとした建築設計、さらには、NAPコンサルタント、NAP International、NAPデザインワークスといった関連会社を持ち、まちづくりから家具製作まで、大いに活躍する建築家です。
そんな中村拓志の建築の一つの特徴が、場所の諦めや自然環境が生きてきた仕上げを、マスプロダクトに頼らず、職人の手で一つ一つ作り上げていくこと。それでも、手や足の堅実にやって来て、職人の技が生きています。
この別荘建築は、そんな設計者と、自然とツリーハウスを愛するオーナー、素晴らしい技術を持った施工者の3人によって創られました。
ツリーハウスの足元にはちょっとした広場もあり、アウトドアやBBQにも使えます。
ツリーハウスから降ろされた階段。自然木の枝で作られた労力を頼りに、緑の中を上へと昇っていきます。
そこには小さなテーブルが用意されていて、お茶をしたり、ちょっとした食事をするにも心地よい場所です。
わずか20㎡にも満たない床面積ですが、大きな引き戸のテラスと、テラスとつながった一体の空間が現れます。木々の枝ぶりの中に浮かんでいるかのような、この場所、この建築ならではの体験です。
上を大きくすると、屋根の頂上にあけられた天窓から柔らかな光が差し込みます。左官で仕上げられた壁が日光を優しく拡げています。
天窓の下の小窓には段子がかけられ、小さな机と腰掛が設置されています。天気が良い日には本を読み、音楽を聴きながら佇んで見ているのも心地よさそうです。
部屋の中心に据えられた暖炉は、冬にはちょっとした調理活躍します。足元の石は近隣の山から切り出して据えにも付けられたもの。この石一つとっても、建築家のこだわりと職人の技が詰まっています。
収納の取りにくい素敵なキッチン、窓辺の水栓、タイル張りのシャワー室。 細部までこだわりぬかれた建築は、過ごすほどに、見るほどに、触れるほどに、味わいを増していきます。
手足に見えるもの、目に見えるもの、そのすべてが、特別な体験になっていきます。
こんな建築で、あなたも過ごしてみませんか?